ドローンの災害時の活用法とは?海外では既に取り組まれている事例もあわせて紹介
日本は四季が美しく豊かな自然に恵まれていますが、集中豪雨や台風、地震、津波など多くの自然災害が発生しやすい国土です。
2021年の2月~3月にかけて栃木県足利市の一帯で起きた山火事では、鎮火まで23日間かかりました。
出火原因は「たばこと推定される」と発表されておりこの山火事により以下のような被害が報告されています。
参照元
近年、こうした自然災害や人的災害時にドローンの活躍が期待されており、2020年夏、アメリカのカルフォルニア州で起きた、東京の約2倍もの面積が消失した大規模な森林火災では、従来の鎮火法に加えてドローンが用いた革新的な方法が用いられました。
注目されているドローンの鎮火法「IGNIS 2.0」とは!?ドローンを使った災害救助の実例
ドローンは災害時に以下のような用途として活躍しています。
- 地震災害
- 水難事故関連
- 火災関連
地震災害におけるドローンの活用法
地震災害が起こった際、ドローンは以下のように活用されています。
- 災害時の緊急点検
- 空撮による被害状況の確認
- 建物崩壊で人が入れない場所の調査
- 土砂崩れなどで車両が通行出来ない場所の調査
1分1秒を争う地震災害において、上記を全て人力で行う場合では膨大な時間と労力がかかります。
しかし、ドローンの場合だと地震災害への初動対応や被災地の状況をいち早く、それも正確に把握を行うことができるため、今までより復旧の目処やスムーズな対応処置を行うことが可能となります。
2016年4月に起こった熊本地震の際には以下のようにドローンが活用されました。
- 目的地までの道のり確認
- 熊本城などの被災状況確認
- 土砂崩れや土石流などの到達範囲確認
上記のような素晴らしい働きを見せてくれましたが、航空法の一部が改正された直後に起こった地震だった為、ドローンを効率良く使うことが出来なかったそうです。
今ではドローンに対する理解が深まり、各自治体や企業でも様々な取り組みや検証が行われています。
操縦技術や活用体制が整いつつあるので、今後の地震災害ではドローンの活躍がより期待できます。
水難災害におけるドローンの活用法
水難災害時に使用されるドローンは2種類あります。
- 水中ドローン
- 飛行ドローン
水中ドローンは「水温が非常に低い場合」や「夜間で視界不良の場合」など、潜水士が潜れない場合に活用されます。
2020年10月、実際に水難救助を想定したデモンストレーションが行われており、水中ドローンを導入する動きが広がりつつあります。
飛行ドローンはライフジャケットの投下や夜間捜索など、水難災害救助を目的に活用されていますが、最近では以下のような水難事故の安全対策にも活用されています。
- 遊泳禁止区域の監視
- 浮き輪を持たせ溺れた人を救助
- スピーカーで遊泳を控える呼びかけ
神奈川県藤沢市の片瀬海岸では、実際に導入する動きが見られているため、今後は全国的にドローンを活用した「水難災害救助」や「水難事故の安全対策」が普及していくでしょう。
火災におけるドローンの活用法
火災現場だと、ドローンは以下のように活用されています。
- 火災現場を上空から確認する
- サーモカメラで火元を確認する
- 山火事による消失面積を測定する
火災現場を上空から確認する事で、現場状況を把握しやすくなり的確な指示が出せるようになるため、今までより効率良く消火活動などが行えるようになります。
そしてサーモカメラ搭載のドローンを活用することで、火元がピンポイントでわかるようになり、素早く消火活動が行えるようになるのです。
実際に、欧州ではサーモカメラが搭載されたドローンが導入されていたり、米国では消火剤が届きにくい急斜面エリアや夜間の消火活動などに活用されたりしています。
山火事による消失面積の測定は、2017年頃からドローンも活用されており、実際に測量した面積とほとんど誤差がなかったようです。
消防本部では徐々にドローンを導入し始めているため、すべての火災現場でドローンが使用される日は近いと思われます。
災害で逃げ遅れた人の探知活用

災害が起こった際、必ず逃げ遅れてしまう人も出てきます。
目に付きやすい場所に避難出来れば良いですが、建物が崩壊して身動きが取れなくなってしまう人もいるはずです。
災害は1分1秒もムダにできないため、災害時における人の探知において、準備に時間がかかるヘリコプターより、迅速に対応できるドローンの方が優れていると言えます。
また、ドローンはヘリコプターより小回りが利く上に、飛行高度も低いため逃げ遅れた人を探しやすい特徴もあります。
そしてドローンには、以下のように様々な機能が備わっているため、場面に応じて使い分ける事も可能です。
- 赤外線カメラ:体温で人を探す
- 光学カメラ:空撮により目視で探す
- 小型携帯電話基地局:携帯電話の位置を検出する
ドローンを適切に目的にあわせて活用することで人命救助及び、災害派遣活動を行う事が可能となります。
災害時にドローンを取り入れることのメリット
上記では実例を解説してきましたが、続いて「災害時にドローンを使うメリット」を解説していきます。
特に大きなメリットとして、以下の2つが挙げられます。
- 低コストで安全
- 物資運搬も可能
低コストで安全
ドローンは低コストで導入できる上に安全なため、行政機関や企業、各自治体などが導入している傾向にあります。
台風や地震、火災など広範囲の災害は、ほぼ毎年の確率で起こっています。
今までは自衛隊や消防隊員が捜索を行っておりましたが、以下のような問題が発生するため捜索がスムーズに進まない事が多々ありました。
- 夜間の捜索が行うことが出来ない・または困難
- 危険な場所を捜索する必要がある
- 二次災害に巻き込まれる可能性がある
ドローンを導入することにより、上記の問題に対して以下のような対策を講じることが可能です。
- 夜間の捜索が可能
- ヘリや人では行けない場所も捜索することが可能
- 人が現場に踏み込む必要がないため二次災害に巻き込まれる心配がない
上記の他にも多くの問題や新たな解決策がドローンを活用することでクリアになります。
「ドローン=低コストで安全」という認識が広まりつつあるため、近い内に全国の災害現場でドローンが活用される日は近いはずです。
ドローンの物資運搬の可能性
運べる重量や大きさは限定されますが、自立飛行の精度が向上しているため、ドローンで物資の運搬も可能です。
離島や病院が対象ですが、小型ドローンを活用し医薬品などの運搬が既に行われています。
近年では大型のドローンも開発されており、高重量の物資も運搬できるようになったため、以下のような業種において導入が検討されています。
- 物流:山小屋へ日用品の物資輸送
- 林業:苗木や林業資材の運搬
- 建設:建築資材(20kg程度)を運搬
災害が起き陸上輸送が困難であっても、ドローンを活用する事によって迅速に物資を届けられるようになります。
課題はまだまだあると言われていますが、国や企業がドローン事業に力を入れているため、既存物流の代替手段として実装される日は近いでしょう。
災害時に緊急ドローンを使う注意点
災害時のなかでドローンを飛ばすことは当然、禁止されています。
申請せずドローンを飛ばしばした場合、航空法違反になります。
航空法を遵守しなかった場合、50万円以下の罰金または書類送検になる場合があります。
航空法とはドローンだけではなく全ての航空機に該当し、「航行の安全」や「航行に起因する障害防止」などを目的としている日本の法律です。
国土交通省のホームページによると、ドローンを飛ばす際は以下のルールを守る必要があると記載されておりました。
- お酒や薬物を使用した状態で飛行させない
- 飛行前に周囲の確認を行う
- 航空機または他のドローンと衝突させないよう飛行させる
- 他人に迷惑がかかる方法で飛行させない
- 日中(日出から日没まで)に飛行させる
- 目視できる範囲で飛行させ、常時周囲に気を付ける
- 人または物との間に30m以上の距離を空けて飛行させる
- 多くの人が集まっているイベントの上空で飛行させない
- 爆発物や危険物などを輸送しない
- ドローンから物を投下しない
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上記1~4のルールに関しては、遵守すれば問題ありません。
夜間飛行やイベント上空飛行など、5~10のルールに反する飛行を行う場合は、事前に地方航空局長の承認を受ける必要があります。
ですが以下に該当する場合のみ、承認を受けずドローンの飛行が行える特例が存在します。
- 事故や災害時に限る
- 国や地方公共団体などに依頼された人限定
上記に該当しない人がドローンを飛ばしてしまうと、いくら人助けとはいえ航空法違反になる恐れがあります。
航空法の特例が適用された場合でも、安全確保の責務を全うする必要があるため、頭の片隅に入れておきましょう。
どうして日本では災害にドローンが使われないのか
欧州や米国と比較すると、日本のドローン導入は格段に遅れを取っています。
遅れを取っている理由として、以下2つの懸念点が挙げられます。
- 飛行時間の問題で遠くまでいけない
- 墜落などの安全性を含めた法整備
飛行時間の問題で遠くまでいけない
ドローンは以下の理由から、遠くまで飛行させる事ができません。
- 駆動時間が短い
- 通信障害が生じる
ドローンの駆動時間は短い傾向にあり、市販ドローンでは5分~30分程度が限界とされています。
- 1万円のドローン:5分~10分
- 5万円のドローン:15分~30分
災害時に使用されるドローンの性能は格段に良くなっていますが、駆動時間は市販のドローンと大差ありません。
山間部や電波を発する鉄塔周辺など、ドローンとの間に見えない障害があると通信障害が起こってしまい、制御不能になってしまいます。
飛行ルートを確認し、通信障害が起こりやすい場所を避ける事は可能ですが、駆動時間の問題があるため迂回して遠回りすることは難しい傾向にあります。
海外製の高性能のドローンが存在しているので、今後はインフラを含め、災害時で高性能ドローンの活用が期待されています。
墜落などの安全性を含めた法整備
この問題については、前述した「飛行時間の問題で遠くまでいけない」の問題とも重複しており、高性能なドローンを活用することができなかったことにより、距離が短く通信障害、天候などの影響でドローンが墜落する可能性があります。
安全性を担保することができる高性能型のドローンがなかったこととあわせて、大きな要因として法整備が遅れていることがあげられます。
2022年6月に施行される第三者上空飛行に関する法案にて、先進国のなかでもトップレベルな法整備が完備する予定とのことなので、2022年6月以降に国内でのドローンを様々な場面で見られる可能性があります。
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今後ドローン市場は大きく変わる

2021年現在、ドローンの市場規模は約2,300億円と言われており、2025年には約6,500億円まで成長すると言われています。
経済産業省はドローンを活用し社会的な課題を解決するため、導入を実現するまでのロードマップを作成しレベルを1~4まで定めています。
-
・レベル1、2
ガイドラインの周知、普及拡大
目視による操縦で空撮、点検、測量などを行う -
・レベル3
レベル4を見据えた実証実験など
本土・離島間の自動運転、無人地帯(山間部など)への配送などを行う -
・レベル4
レベル3の課題分析、サービス提供
自動運転かつ有人地帯(市街地など)で物流や警備などを行う
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レベル1、2は問題なくクリアしているため、現状はレベル3の段階です。
自動運転で離島に医薬品を配送したり、大型ドローンを活用して山間部に資材を搬入したりしているため、近い内にレベル4に移行するでしょう。
ロードマップを見る限り、特に災害対応に力を入れている傾向にあるため、災害時に活用できるドローンも順調に増え
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